今回お話しするのは
改造車を使った復讐
キルドーザー事件
です。
事件背景を考えたら、この事件が起きても仕方がないと思える悲しい事件でもあります。
キルドーザー事件とは?
キルドーザー事件は2004年6月4日に発生した無差別破壊事件。
アメリカのコロラド州グランド群のグランビーという町で一人の男性が引き起こし、7億以上の被害を出し、犯人の自殺で終わった事件。
テロのように感じられるが、犯行動機は利権を貪ろうとした者たちへの復讐事件。
犯人以外の死者が出なかったことが、唯一の救いともいわれている悲しい事件でもある。
- 被害: 700万ドル以上
- 犠牲者: 犯人
キルドーザー事件: 犯人「マーヴィン・ヒ―マイヤー」
事件の犯人は1951年10月28日にサウスダコタ州で生まれたマーヴィン・ヒ―マイヤー。
スノーモービルなどのウィンタースポーツが趣味であり、空軍を卒業した後、海軍に入隊。
除隊後の1991年に、同州のコロラドのグランビーに移住。
そこで趣味を楽しみながら、溶接工場を開いてのんびりと余生を過ごすはずであった・・・。
ある計画が彼の耳に届き、その計画が彼を孤独にするまで。
コンクリート工場建設計画(ゾーニング紛争)
2000年にキルドーザー事件が起きるきっかけとなった「コンクリート工場建設計画」が持ち上がった。
これは、「(マーヴィンの家のすぐ隣に)コンクリート工場を建設する」という計画であった。
当然、騒音や公害を考慮して住民の少ない町外れに工場は建設される予定であり、建設されれば
産業の少ないこの町に職を産み、町も経済的に潤う
と町の住民の多くは賛成したが、その建設予定地の隣は彼の家であった。
考えても見てほしい、自分の家の横に工場が建設されるのである。
まともに生活できるはずもなく、マーヴィンも
コンクリート工場が建設されると、溶接工場の看板が道路から隠れてしまう
と市の計画に反対であった。
そして、彼は「街の景観を守ろう」という工場建設反対運動を、賛同する市民と共に開始したのであった。
敗北・孤立・憎悪
運動を始めてから、2001年には町を相手取って裁判を起こしたが敗訴。
それでも反対運動を続けていたが、2003年に風向きが一気に変わってしまった。
それが、地元新聞社「スカイハイニュース社」がマーヴィンたちを批判する記事を掲載したのである。
このことがきっかけとなり、マーヴィンの運動から離脱する者が一気に増え、彼の婚約者も彼の元を去ったのであった。
さらに、最悪なことに町が彼の溶接工場に抜き打ち検査を実施。
設備不備を理由に彼に対し
- 罰金
- 業務改善命令
などを出したが、従わなかったので「業務停止命令」が下され「営業停止」となった。
仕事を奪われ、恋人も奪われ、住民は自分の味方になってくれず、結局コンクリート工場は2003年に建設された。
極めつけは翌年の2004年に彼の父親が死去。
孤立し、追い詰められた彼は町と住民に対して復讐を計画したのであった。
キルドーザー事件の流れ
ここでは、マーヴィンがキルドーザー事件を引き起こすまでの流れと、事件の流れを話していきます。
- 改造キルドーザーの準備
- 事件発生
- 警察との戦い
- 犯人の自殺
この順番で見ていきます。
改造ブルドーザーの準備
追い詰められ、町への復讐を誓ったマーヴィン。
彼は自分の倉庫に引きこもり、超大型ブルドーザーを改造した。
このブルドーザーはコマツ製のD355Aブルドーザーで、オークションで購入。
- 厚さ1㎝(1/2inch)程のコンクリートと鋼鉄の装甲
- 車体の前後、側面に銃口を合計5門配置(正確な銃の数は不明)
- ビデオカメラとモニターで外部を中から安全に把握
という移動要塞を2か月で作成。
キルドーザーに乗り込むと、内側から溶接を行い密閉、町へ復讐に行ったのであった。
事件発生
倉庫から出発したマーヴィンは手始めに、全ての元凶ともいえるコンクリート工場を破壊。
通報で駆け付けたパトカーや停車していた車を破壊していった。
全壊したコンクリート工場を尻目に、キルドーザーはグランビーの中心に向かって走っていったのであった。
その後破壊行為を繰り返していき、
- 建設許可を出した前市長の家
- 銀行
- 新聞社
と復讐相手を次々に破壊していき、プロパンガスタンクのある貯蔵施設へと進んでいった。
そして、プロパンガスを破壊しようと機銃を乱射。
SWATとの戦い
地元警察は対処ができないと判断し、SWATに救援を要請。
SWATが到着するまでに、警察署長がキルドーザーに飛び乗ったりしたが、溶接されていた為仕方なく脱出。
SWATの到着後、警察が持っていないライフルや、大型重機で対処しようとしたが失敗。
キルドーザーの前にはどれも無力であったという。
犯人の自殺
いかに頑丈なキルドーザーであっても限界はあります。
プロパンガスの破壊に失敗したキルドーザーのエンジンに流れ弾が命中。
ラジエーターが故障し、焦った彼は工具店に突入したが建物の崩壊でキルドーザーは動かなくなった。
SWATがキルドーザーを取り囲んだところで、マーヴィンは自分の拳銃で自殺。
事件はその日に収束したのであった。
事件後と世間の反応
15か所以上の破壊を繰り返したキルドーザー事件は、700万ドル以上の被害と、容疑者の死で終わった。
マーヴィンの遺体の搬出には12時間以上もかかったという。
ただ、彼に対して「一人も殺害していない」という結果もあってか、
彼は犠牲者を出さないように注意を払っていた。一庶民として、腐敗した役者に対して復讐をした英雄だ
と同情する声も少なくはなかった。
SWAT隊員も
彼のしたことは許されることではありません。しかし、こんな悲惨な事件が起きる前に何かできることはなかったのかと、今でも悔やまれます。孤立していく彼を救ってやることはできなかったのかと考えることがあるんです
と語っています。
キルドーザーは2005年4月19日にスクラップ解体されたといわれています。
まとめ: キルドーザー事件
今回はアメリカで発生したキルドーザー事件について紹介させていただきました。
日本でもこんな感じの立ち退き交渉争いはありますが、ここまでの被害を出した事件は、日本でもそうないのではないでしょうか?
という訳で今回のまとめ
- キルドーザー事件は2004年に発生した事件
- アメリカのコロラド州グランビーという町で発生
- コンクリート工場の建設に反対していた男性が引き起こした
- 街から孤立させられ、追い詰められた男がブルドーザーを要塞に改造
- 街を次々と破壊していき、最後は拳銃自殺
- 犯人以外の死者はいなかったので「英雄視」する声もある